象徴とは何なのか?

象徴=シンボルとは

「象徴」とは、ものごとを何かにたとえて表現する一種の比喩です。

横文字にしたものが「シンボル」で、こちらのほうがよりポピュラーな言い回しかもしれません。ただし、「象徴」と「シンボル」では、厳密には使い方が変わるところがあるので、追々つかんでいきましょう。

まずは、わかりやすい「象徴」として、たとえば「ペン」。「ペンは剣よりも強し」という慣用表現がありますが、この場合のペンとは、ペン=読み書き話すための道具であり、人知の象徴です。対して、剣は闘争の道具=武力の象徴です。

武力よりも人知が勝ること、より知性を養っていこうというメッセージでもあるわけですが、ストレートではない間接表現、暗に伝えるという一種の伝達方法として用いられてきたことも重要です。必要があって、発達してきた文化と言えましょう。

この解説がみなさんにある程度しっくりきているように、象徴とは、誰でも共通の認識ができるようなわかりやすい端的な表現であって、長い歴史や伝統が担うところのもの。いつ誰がどう決めたという類の決まり事ではありません。他方、地域性や時代的な特色から、ところ変われば象徴も変わるということにもなってきます。

すでに小アルカナの「剣」も風=理知の象徴・・・とふとお気づきになった方もいるのでは。象徴学とは、深い学問の一分野ではありますが、単体で独立しておらず、比較文化、芸術、宗教、思想といった学問の一ブランチ、小カテゴリとして存在意義があるというところでしょうか。

ともあれ、とくにタロット愛好家の皆さん、タロット占い師としてお仕事をされている皆さんはもうこの暗示的な絵札と日常的に密に関わっていることでしょう。直接的ではない、暗に示す暗示の世界をより極めて日常生活にも役立ててまいりましょう。

 錬金術的な象徴としては、錬金術師の大作業において、彼らの深い意識の中で発生する内面的なエネルギーの統合、即ち無意識と意識、また、男性性と女性性が統合される段階が、王と王妃の結婚という図像で表されます。

左)錬金術における王と王女の結婚の図像。それぞれの属性として、足下に太陽と月が描かれている。

手前味噌ですが。


かけがえのない光「太陽」と「月」

太陽

 シンボルの中のシンボル、シンボルの王者とも言える「太陽」です。太古において、万物の生みの親、唯一神と崇められたこの恒星は、数千年の時を経て今もなお私たちの頭上で生命の光を、生きとし生けるものに不可欠なエネルギー源としてさんさんと与えています。

 エジプト神話の主神、太陽神ラー、ギリシア神話の英雄、太陽神アポロン、自らを「太陽王」と名乗ったフランス国王ルイ十四世等に見られるように、古今東西の人々にとって、太陽は普遍的な権威の象徴として尊ばれてきました。男性神、国王のシンボルとしての太陽はあまりにも私たちの意識に浸透しています。天空に輝くその熱と光が男性の血気と結びつけられ、対して、地上を潤す冷たく流動的な水、海、大地そのものは、女性の緒力と結びつけられ、その象徴を太陽と対の関係にある「月」としたのでした。

(「タロット象徴事典」より)


月(太陽と月)

ウェイト・タロットでは、太陽の光を反射する月が描かれており、私たちはこの「月の光」を観るとときには、おのずと同時に太陽の影響力も読んでいる点が、このアルカナという図像の驚異なのです。

 それぞれ相対する男性と女性の緒力を担うものとしてひとつの組みになり、ひとつの世界が形成されるという神話がよく知られていますが、時代や土地により太陽と月の役割が入れ替わっていること、月が男性神で、太陽が女性神であることなどは珍しくはありません。シンボルは、人の意識と感性により生み出されるものですから、時代と共に変化し推移してゆくものなのです。月を精神、心の象徴とし、対照的に、太陽を肉体、物質とするという定説は、一重に多くの人を説得できるものであったから、そうなっただけのことです。西洋においては、ギリシア神話が定式化の決定打になったように思われます。

 そう定めることに利便性を見出した時の権力者たちに利用されてきたような節があるとしても、結果として多くの人々の心に受け入れられた説が、世代を通じて語り継がれ、人々の意識や生活に定着すること、これが「伝統」です。長い歴史を背負った、象徴、シンボルというものですから、端的に扱うことは避けたいものです。

 太陽神を女性と見なす神話は東洋に限らず多々見られます。日本では、天照大神が奉られています。最初の神である「創世主」は、原理的に女性でなくてはならないとする説や、最古の神は天空よりも、豊穣を司る地母神であるはずだという人々のある意味本能的な感覚がそこにはあるのです。「太陽」に男性の諸力、絶対的権力、支配力を見るか、女性の諸力、宇宙の起源、命の源泉を見るか、そしてそれを男性に例えるか女性に喩えるか、各所の地域性にも関係するところでしょう。


タロットの絵柄のみならず、様々な象徴の世界、色々な形式、数々の表現、エンドレスで探求を続けてまいりましょう。・・というのは、やはり絵は絵だから。描かれ、表現されたものは実にストレートです。タロットの展開、まさにタロットの神様がその場で、わたしたちに描き示してくれた唯一無二の絵画といったところでしょう。ぜひとも、日ごろから絵画に親しみ、ものごとを絵画的に、感じて、考えてみていただきたい、そんなところでしょうか。


ウェイト・タロットでは、「幼児」と「馬」というシンボルを用いて、「意識」と「無意識」が一体化することを表現されています。「己を知る精神の夜明けが自然な心の意識の上 に訪れたとき、その心が再現される過程で獣性を完全服従させて導く」とは、A.E.ウェイトのことば。 当時としてはこれは画期的なシンボリズムの取り入れ方!

いやいや、この馬上の幼児は、すでにマルセイユタロット、ジャック・ヴィヴル版にて描き表されています。この子は少女です。

★ジャック・ヴィヴル版については当サイトで研究中。マルセイユ・タロット・ビギナーさんはNahdia.netの情報からどうぞ。

一般の皆様向けにストリートアカデミー「タロット日曜美術館」7月はイレギュラーで土曜日です。他日程は開催リクエストを送りください☆彡 

※各マルセイユ・タロットにて、絵柄に微妙な差異はありますが、すべての札にはローマ数字が記されており、22枚のアルカナの序列は整っている模様。マルセイユ・タロットの札構成を思い出してみよう。下記が国書刊行会「マルセイユ・タロット教室」の巻頭カラーになっているスパイラル・ステップ・・・7段階です。井上は、マンテーニャ・タロットの序列になぞらえて、7段階を下記のA~Eの5段階として、もともとの札の位置を幾分変更しつつ、並べ直してみました。

★タロット大アルカナの絵柄、そして並び方、そもそも何故この22、もしくは21枚なのか?

この謎を解き明かすのに絶対的に必要なマンテーニャ・タロットであることでしょう。

公爵家のために作られたヴィスコンティ・タロットはテンペラ画でした。

銅版画のマンテーニャ版は、量産化を視野に入れて作成された可能性があります。そこから木版画の、庶民のマルセイユ・タロットへとタロットの歴史は脈々と形を変え世の中に、庶民の生活に浸透してきたのです。

現代タロットの代表作:ウェイト・タロットの魅力と言えばシンボリズムですが、ひとえに現代人を魅了したという作品であって、正しいタロットだというわけではありません。が、A.E.ウェイトの宗教・思想研究の集大成なのです。すなわちウェイト・タロットには、キリスト教、カバラ、古代エジプト、ギリシア・ローマ神話、錬金術的なシンボルに満ち溢れている。人間の精神の歴史を物語る象徴絵図なのです。

これにどこまでの効能があるのかという話は、2024年春開講のセラピュティックタロット&ホロスコープカウンセリングで実践的にお伝えしてまいります。

※おまけの動画「シンボルで読む」・・・の前に、「シンボル」を意識しない、ということは、頭の中で下記のような思考がなされつつタロットリーディングを実行することになる。太陽は「いいカード」、悪魔が出ると「あまりよくない」・・当初はもう誰しもが「いい」「わるい」で占うことにもなろうかと。そこでやはり誰しもが「あれ?」っと。。太陽、悪魔のみならず、すべての絵柄を、それぞれパーツの集大成であるアルカナを探究しはじめるわけですね。下記はもはやアルカナではありません。

この字面でリーディングすることと、「タロットの絵柄で占う」ことには隔たりがある・・・ここまできたらせっかくなので、しっかり占えるようになりたいな!そんな思いから、今の筆者がありますので、おのずと誰しもが体感し会得できることでもあるのでしょう。 

※かなり、ビギナーさん向けの おまけのおまけの動画・・・いきなり話出しているので、消音でご視聴ください。「いいカードとわるいカード」で占っていると、とんでもない壁にぶつかる、筆者がそうであったように、振り返りながらのお話でつい笑いが。ホント失礼な私で恐縮でございます。

シリーズ「シンボルとは何なのか?」

そして「星」

ご意見ご感想お待ちしております

天空に輝く「星」は、太陽、月と並んで、太古より人が「神聖なる光」として崇める三光のひとつ。

 ウェイト版アルカナ「星」の情景は、北極星を軸に、その周囲を回転してゆく北斗七星の7つ星、即ち大熊座が描かれたものであるとも、女神イシスの象徴・シリウスと、その周囲に輝くオリオン座が描かれているとも解説されてきました。北極星は、地球の自転軸の延長方向にあるため、通年真北見えます。故に、エジプト人によって不滅の象徴とされたのです。彼らは、この星を目印にして、方角や時間の経過について多くの情報を得たのでした。また、天空に輝く青白い一等星、全天で最も明るい恒星シリウスは、彼らにとって夜空の太陽とみなされました。ナイル川の氾濫を知らせる星として重要な役割を果たすこの星は、英知の象徴・女神イシスの星、その近くに付き添うように輝くオリオン座は、万能神オシリスの象徴とされたのでした。

 アルカナ「星」には、不死鳥が描かれています。キリスト教美術では、生命の木にとまる鳥と木に絡み付く蛇とが戦う図像が、善と悪との戦いを象徴として描かれます。また、ペリカンは、イエス・キリスト自身を象徴する鳥とされています。自ら胸を突き流れ出た血によって、蛇に殺された雛鳥を復活させる図像が残されており、イエスの自己犠牲と献身を表すために描かれるとのことです。


 "The Pictorial Key to the Tarot"の中でウェイト博士は、この「星」の札が、地上に生きるもの全てのものが無償で与えられるべき「命の水」であり「聖霊の賜」その物であると語っています。そして、「星」が単に"希望のカード"であると安っぽく語られることに異論を呈します。「夢」でも「期待」でも「欲望」でもない、これは「希求すること」の札であると、私は主張するところです。

「創造に必要なものは魂だけである」ということが重要です。金銭も資材も物質的なものはここで何ひとつ問題とされていないのです。この札を引いた時には、条件も環境も設備も何も問題にはなりません。ただ、あなたが居ればそれでいい。あなたが内面から発する輝きが、次の一歩を決めるカギになるでしょう。そして、その輝きはあなた次第。あなたの内なる光によって、不滅の美しさを誇るものとなり得るのです。永遠の命を授かるカギがここにあります。霊、スピリットとは、不死および内光Inner Lightであり、その輝きこそがウェイト版の「THE STAR」なのです。

 

星の異形としての「世界」

ウェイト博士は、描かれているリースを「占星術師の冠」であるとし、リースの中で踊る女性を、宇宙の神秘を知るに至った時の私たちの内的な光であると、アルカナ17「星」の女性の異形であると述べています。

 アメリカ各地でのセルフ・ケア・ミーティング(自助グループ)において、会の始まりに皆と一緒に捧げる祈りのことば「SERENITY PRAYER」があります。

GOD, GRANT ME THE SERENITY

TO ACCEPT THINGS I CANNOT CHANGE,

COURAGE TO CHANGE THINGS I CAN, 

AND WISDOM TO KNOW THE DIFFERENCE 

神よ、静寂を呼び覚まし、私は求めます。

流れに逆らわず、宇宙に身を委ねようとする勇気と、

流さることなく、力の限り変化を起こそうとする勇気を。

そして、いずれにすべきか

その違いを知り得るだけの知恵を

 ミーティングにおいては、「神」なる部分は、私たちに内在するHigher Powerであるという解釈がなされます。静寂の中で耳を澄ませれば、誰もがHigher Powerとの交信を果たすことができること、適切な道へ進み、救いが得られることを教えられます。私たちが生きている中で、直面する壁について、それを変えようとアクションを起こすべきなのか、受け入れるべき事態なのか、ある意味「妥協点」を知ることが折に触れて必要になってくるのです。伸【の】るか反【そ】るか、いずれかを問うために古来より伝統的に用いられてきたのが占術なのです。

 私達には、サインが必要なのです。シンボルによって、そのサインを示してくれるのがタロットであり、私たちに内在するHigher Powerとの交信に匹敵することでしょう。タロット占術で導き出せる答えは、当事者の心の中にあるという人も多く存在します。当事者だからこそ、向き合いきれない心に対して働きかけ、円満な解決法を導き出す、それがタロット占術であることを伝えてくれる札、それが大アルカナ22枚なのです。

ちなみに、マンテーニャのデッキでは星々が織りなすいわゆる天体ショーを物語る絵札が存在しています。B31「イリアコ」


次回更新をお楽しみに!

貴重な中世ヨーロッパのシンボリズム

教養・文化の集大成

マンテーニャのタロットとは何なのか?

I Tarocchi del Mantegnaとは何なのか?

いわゆる「マンテーニャ・タロット」と呼ばれているタロットについて

絵柄と札番号、序列というきわめて整然かつ論理的な50枚の銅版画。A~Eの5つのグループに分類され、そのアルファベットは札の左端に記され、右端にはⅠ~Ⅹのローマ数字が記載されています。 

上記の表現はよく見られるごく一般的な「マンテーニャ・タロット」についての見解です。しかしながら、イエローマーカーの部分が、このデッキを作成した可能性がある画家が、有名なベネチアの画家、アンドレア・マンテーニャであることを示唆することが時代と共に色濃くなってきている次第。Twitterで紹介したカード・トランプ研究家サイモン氏のサイトでもマンテーニャのデッキについては「すべてではないが一部はマンテーニャ自身が手掛けた可能性があるデッキ」となっていたように、これからこのように塗り替えられていくこと必須です。

また、エステンシ・タロットがいまだにフランス国立図書館で「いわゆるシャルル6世のタロットと言われたデッキ」と表記されているため、「エステンシ・タロット=シャルル6世のタロット」という誤認が国内では見受けられます。フランス国立図書館にメールしたところ「私たちはタロットの専門家ではありませんので」という前置きとともに、現在ではシャルル6世のタロットではないという主旨のことは書いておられますが、エステ家のためのデッキだという情報をもっているわけではないとのこと。同様に、パヴィア市民博物館にもメールをしておりまして、そちらからの返答は、にいわゆる「マンテーニャ・タロット」と呼ばれている50枚の銅版画が書籍のように閉じられた状態で保管されているとのことで、それらの銅版画の確固とした作者の情報はありませんとのこと。

* つまり、いわゆる「マンテーニャ・タロット」と呼ばれている作品ですが、アンドレア・マンテーニャの作品だという物的証拠はありません。 Correct しかし、まだまだその可能性は十分に検証される必要があることがらなのです。とりあえず、状況証拠をストアカ日曜美術館にてあますところなくお伝えしております。

いわゆる「マンテーニャ・タロット」と呼ばれている作品ですが、アンドレア・マンテーニャの作品ではありません。・・NG! そんな証拠はどこにもありません。

いわゆる「マンテーニャ・タロット」と呼ばれている作品ですが、アンドレア・マンテーニャの作品だという説はいつわり、もしくは誤りです。 ・・120%NG Incorrect!

これらの表現に気をつけながら、タロット論を展開されてください。

※そもそもTarocchiタロッキとは?:

15世紀のイタリアでは、「タロッキ」(Tarocchi/タロッコ tarocco複数形)と呼ばれる神秘的な絵柄を特徴とするカード・セットが多く作成されており、その中で切り札とされる主要な絵札は、トリオンフィもしくはトライアンフィ(trionfi)と呼ばれていました。これは、「勝利」を意味することばです。ラテン語の「トリオンフィ(もしくはトライアンフィ)」(triumphi)から派生した語句であり、これが日本語の「トランプ」の語源でもあります。すなわちトランプとは、実際にはゲーム用のカードその物というより、「切り札を使ったゲーム」を指すことばに相当するのです。ちなみにラテン語の「トリオンフィ」はまた、宗教上の「儀式、行列」を意味するものでもあります。


1 同時期1400年代中期の名だたるタロッキを検証

ミラノのタロットも、フェラーラーのタロットも、それぞれ番号も タイトル も振られてはいませんでした。

現在のスタンダードなタロットと言えばそれぞれ固有のローマ数字とタイトルをもつもので、その序列や呼称は動かしがたいものとなっていることは周知のこと。

対して、ミラノからは遠くもフェラーラとは若干近い位置にあったパヴィアでは番号、タイトルが振られ、さらにはAからEのアルファベットでグループ分けされた序列が明確なデッキが生み出されていたのです。それが「マンテーニャ・タロット」です。

2 ベネツィア出身の画家アンドレア・マンテーニャとは?

 ここは長いのでもう少々。

 ストアカで使用した画像を。 詳しくご所望の方はオンライン講座にて!

3 イギリス、大英博物館のいわゆるマンテーニャのタロットと呼ばれる作品について

ストアカで使用した画像を一部アップします

下記は、ハンス(ヨハン)・ランデスペルダーによるマンテーニャ・タロットの複製品、いわゆるレプリカです。ランデスペルダー氏はデューラーの作品なども手掛けていた腕のあるレプリカ職人として知られていたとのこと・・・

Twitterで紹介したカード&トランプ協会のサイモン氏のサイトではデューラーもマンテーニャのタロットのレプリカを作った記載があり、どうなんでしょうね、興味深い記載です。

日本でも、江戸時代以降、喜多川歌麿や葛飾北斎など著名な絵師の作品は多く複製品が量産され、巷に広まりました。復刻品が出るということは、それだけその作品が優れているから、もしくは、作品が高名な画家によって描かれているから、ですね。「マンテーニャ・タロット」はそれだけ美術作品として優れているものであることは事実なのです。

マンテーニャ・タロットは、彫刻作品としてはまさに初の標本だということです。デッキの図像学は、寸分違わず当時の学者の功績あってのものだと考える必要があります。当時の人文主義者のガリノ・ガリニ(Guarino da Verona/1374年 -1460年頃)の一派に関連しているのではないかという可能性があります。(Lo Scarabeo社のブックレットより)

4 フランス国立図書館所蔵のいわゆるマンテーニャのタロットと呼ばれる作品について

ここは本題ではないので自動翻訳機のコピペで失礼をば。1460年頃のフェラーラ作品ということに。薄いラインが特徴ですね。この状態では、まるで書籍の挿絵のようにも見えるのですが。。

いずれにしても、これらの絵札がカードゲームのために作られたものではないことは当初から専門家たちが指摘していることです。

では何のために? カードが果たしていた主な役割、大まかな流れも押さえておきましょう。

さて、当サイトで以前から述べてきました、「美術の専門家がタロット研究に乗り出せば最強」説。 これを体現してくれたのがイタリアのCristina Dorsini女史です。彼女は上記書籍にて、巨匠アンドレア・マンテーニャがマンテーニャ・タロットを手掛けた可能性について、研究成果を発表しており、この文献は国際トランプ・カード協会/International playing card societyはじめ多くの支持・推薦を集めるに至っているのです。

Cristina Dorsini 氏はその中で、フランス国立図書館の作品と、パヴィア市民博物館にある、Cristina Dorsini氏が主張するマンテーニャ自身が手掛けたであろう原版を比較しています。 

左)パヴィア市民博物館   右)フランス国立図書館 銅版画のラインも陰影も薄いのが特徴的

5 パヴィア市民博物館所蔵のマンテーニャ・タロット全50枚の全容は?グループごとに見てまいりましょう。

E グループ:Conditions of Men/この世の人間

現在のスタンダードなタロットに見られる

「愚者」「魔術師」「皇帝」相当のあらゆる階層の人々

ヒエラルキーが如実に反映される10枚のEグループ

Eグループの中で、「貧民」はⅠであり、Ⅹの「教皇」へと位階を上がってきます。


D グループ: The Muses and Apollo/神々の世界

11番からは、アポロと彼が率いる9人のミューズ(=ムーサ/女神たち)11番目の札からムーサが9人登場します。 9人のムーサは「人間の知的活動をつかさどる女神」。皆ほぼ楽器を手にしています。

11. CALIOPEカリオペ、12.URANIAウラニア、 13.TERPSICHOREテルプシコレ、 14.ERATOエラト、15.POLYHYMNIAポリヒムニア、 16.THALIAタリア、  17.MELPOMENEメルポメネー 18.EUTERPEエウテルペー、 19.CLIOクリオ、 最後が20.APOLLO アポロです。

ムーサたち:額にしわ寄せて笛を吹き鳴らすものあり、澄まし顔ありとポーズもバラエティに富んだ女神たちです。50枚の中世版画絵札のおおよそ五分の一を占めるこれら女神軍団は総じて「女性の力」の集合体と言えそうです。


Cグループ: The Sciences and the Arts/学術と芸術


「人文科学と自然科学」のほうが訳出としては正しいのでしょうか。「哲学、占星術、神学」により支配されていた3つの学科「文法、修辞、論理」と4つの学科「算術、幾何、天文、音楽」(※)が描かれています。

※ローマ時代に制定された学問の基本。以降、ヨーロッパの教育史において受け継がれていった「七自由学芸(7つのリベラル・アーツ)」を指します。


B グループ: The Ethical and Cosmological Principles/倫理と宇宙論

Bの31から40まで;守護神と徳

4つの基本道徳と3つの神学的徳を共有する3つの普遍的原理(光、時間、空間)を表す。


Aグループ: The Planets and the Stars/天体

【階級Aの41から50まで】惑星と天球のグループ

7つの主な惑星で始まり、万事が始まる神の領域で終わります。(Prima Causa、神光、A50) 

50 Prima Causa

神光

イタリア、Visconti Castle in Pavia内、パヴィア市民博物館所蔵のマンテーニャ・タロットはすべて当サイトが運営するインターネットタロット美術館にてご覧いただけます。ぜひ、画像をじっくり御覧になりながら、マンテーニャ・タロットのすべてを書かせていただきましたこちらの冊子をお読みいただければと! この図像学とタロットの関連性を誰が否定できるのでしょうか?

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